【実施報告】第2回支援者支援研究会
令和8年2月15日(日曜日)に、第2回支援者支援研究会を開催いたしました。研究会の内容につきまして、以下のとおりご報告申し上げます。
コドケンは今後も、支援者支援コーディネーター養成講座や本研究会の企画・実施を通じて、児童相談所や児童養護施設等の現場が抱える課題の解決に向け、引き続き取り組んでまいります。
実施概要
今回の研究会には、児童相談所や児童養護施設などの職員の方を中心に、会場とオンラインを合わせて90名の方にご参加いただきました。研究会では、支援者を支える取り組みを行っている団体の実践が紹介され、組織としてどのように支援体制を整えてきたのかが共有されました。支援者支援は現場だけの努力では難しく、施設長や所長といった責任者の前向きな姿勢や、組織としての後押しがとても大切であることが強調されたとともに、支援者支援の導入や体制づくりを考えるうえで、多くの気づきが得られる時間となりました。
◆基調講演「組織的支援の重要性について」
支援者支援コーディネーター養成講座講師 日本社会事業大学名誉教授
藤岡 孝志 氏


本講演では、「支援者支援は支援の質を守るための基盤である」という視点から、福祉現場における支援者の在り方や組織文化について講演が行われました。はじめに、支援現場では職員自身の心身の不調や離職が深刻化しており、支援者が健康で安心して働けることが、子どもや家庭への支援の質に直結する重要な要素であることが共有されました。
また、支援者は「支援する側」という意識が強く、自身のしんどさや不調を周囲に相談しにくい現状があり、受援力が低下しやすいという課題も指摘されました。こうした課題に対し、自己開示や主観的な弱さを安心して共有できる仕組みづくりや、感情を表現できる場(サードプレイス)を職場内に確保することの重要性が示されました。
最後に、支援者が安心して働き続けられる組織文化と仕組みを整え、組織全体で支援者を支える姿勢を持つことが、結果として子どもや家庭への支援の質を高める土台になるとまとめられました。
◆葛飾区児童相談所における支援者支援 ~支援者支援コーディネーターの配置について~
葛飾区児童相談所 児童相談課長
森 孝行 氏


葛飾区児童相談所では、開設当初から専任の支援者支援コーディネーターを配置し、組織的な支援体制を構築していることが紹介されました。1・2年目職員への定期面接に加え、日常的な「ちょこっと面接」を行うことで、相談しやすい環境づくりと心理的不調の早期把握に取り組んでいるとのことです。
さらに、援助方針会議への参加や外部スーパーバイザーによる助言を通じて、客観性と守秘性を確保しながら、組織横断的な支援体制の強化を図っていることが報告されました。
◆支援者支援 実践報告
社会福祉法人共生会 希望の家
佐藤 孝平 氏


児童養護施設「希望の家」では、慢性的な疲労感や人員の余裕不足といった組織課題の解消に向け、支援者支援の取組を本格的に導入していることが報告されました。
管理職および養育チーフが支援者支援コーディネーター養成講座を受講し、共通理解を形成したうえで、複数のコーディネーターを任命し、自己チェックの実施や全体研修、個別面談などを展開していることが紹介されました。導入後は、退職者の減少や採用面への好影響が見られるなど、支援者支援が組織改善につながりつつある状況が共有されました。
今後の課題としては、守秘義務を含めた連携体制の整理や、活動を継続・充実させるための体制強化が挙げられました。
◆パネルディスカッション
支援者支援の「定着」を阻む課題にどう向き合うか
パネルディスカッションでは、支援者支援を現場に根づかせるうえでの実務的な工夫や課題について意見が交わされました。葛飾区児童相談所では、1・2年目職員を対象とした定期面談に加え、管理職以外のコーディネーターによる日常的な「ちょこっと相談」を行うことで、相談しやすい風土が生まれ、相談件数の増加につながっていることが紹介されました。また、相談予約や連絡方法については、形式にこだわらず柔軟に対応し、利用者の心理的負担を最小限に抑える工夫が共通点として示されました。
一方で、専任ではなく兼任体制であることによる立場の切り替えの難しさや、コーディネーター自身が孤立しないための体制づくりといった課題も共有されました。これに対し、複数人体制での運営や定期的な情報共有、外部スーパーバイザーの関与が重要であると整理されました。さらに、支援の効果測定については難しさがあるものの、離職率の低下や採用面での好影響といった変化が現れている事例が紹介され、支援者支援は「仕組みと文化の両面から整えることが重要」であると確認されました。
さらに、支援者支援を組織的に導入し、効果を現場に浸透させていくための視点や工夫についての議論が行われました。相談の敷居を下げる環境づくりや、コーディネーターが孤立しない組織体制の必要性が共有されたほか、中堅層の疲弊といった見えにくい課題を言語化することや、リーダーの存在の重要性についても繰り返し指摘されました。全体を通して、職員が大切にされていると感じられる風土の醸成が、支援者支援の定着と支援の質の向上を支える重要な鍵であることが確認されました。


“職員が大切にされている”と 感じられる風土こそ効果を生む
効果測定だけでなく、風土づくりの重要性を討論。 相談件数が増えた理由は「制度よりも、空気・雰囲気」。 “相談していい”“弱音を出していい”と感じられる環境をつくること。
”即効性を求めない”こと
「支援者支援は時間をかけて浸透するものであり、 即効性を求めると失敗する」と強調。 1~2年目の定期面談や顔が見える関係づくりなど、 地道な積み上げを重要視。


コーディネーターを孤立させない組織的支えの必要性
佐藤氏が「コーディネーター自身が孤立しやすい」と課題提起。 森氏も「複数配置と上司との連携が不可欠」と応答。 藤岡氏は「エンジン役を支える仕組み」が重要と総括。
特別報告

特別報告では、藤岡先生より「日本支援者支援学会」設立に関する重要な発表が行われました。2026年2月の発起人総会を経て、支援者支援を専門的に扱う学会として正式に設立する方針が報告されました。
本学会は、児童福祉分野に限らず、被災地支援、医療・看護、心理、教育など幅広い領域を対象とし、支援者が抱える二次的負担やバーンアウトのリスクにも焦点を当てる学際的な取り組みを目指していることが紹介されました。日本に根付いた支援者支援の考え方を基盤に、研究と実践を往還させながら社会的実装を進める役割を担うことが示されました。
実施報告書のダウンロード(無料)はこちら

この研究会は、児童相談所等の子ども家庭支援のための機関や児童養護施設等の子どもの入所施設の職員向けの専門的な講座です。「支援者支援コーディネーター養成講座」を受講された団体や職員の方々の学びや実践内容を共有し、支援者支援学の発展に寄与することを目的としています。また、それと同時に、養成講座を受講されていない関係機関の方々にも広く公開する形で実施しました。
イベントの内容や様子について、どなた様でもお手にとっていただけるよう実施報告書にまとめました。所属団体や支援者支援に関心を寄せる知人の方々への紹介や共有といった用途にぜひご利用ください。

